はじめに
日本は、漫画やアニメ大国である事は、紛れも無い事実でしょう。
けれども、企業活動における漫画の利用は、まだまだ一部に限られている。
ではなぜ、企業活動において漫画の利用が進まないのか、その問題点と解決策を語ってみました。
もくじ
第一話・日本企業はもっと、漫画を利用すべき! | ||
第二話・企業における漫画の優劣の判断 | ||
第三話・漫画家単位ではなく、編集者と契約する | ||
第四話・説明漫画ではダメな理由 | ||
第十三話 | 第十四話 | 第十五話 |
企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示
日本は、漫画やアニメ大国である事は、紛れも無い事実でしょう。
けれども、企業活動における漫画の利用は、まだまだ一部に限られている。
ではなぜ、企業活動において漫画の利用が進まないのか、その問題点と解決策を語ってみました。
第一話・日本企業はもっと、漫画を利用すべき! | ||
第二話・企業における漫画の優劣の判断 | ||
第三話・漫画家単位ではなく、編集者と契約する | ||
第四話・説明漫画ではダメな理由 | ||
第十三話 | 第十四話 | 第十五話 |
しばらく、糖尿病で入院しておりました。
血糖値が450まで行ってしまって、かなりアカン状態に。
現在、二つのブログを運営しておりますが、もう少し健康状態が落ち着くまで、こちらのブログを不定期更新とさせていただきます。
宜しくお願いいたします。
「ところでお前ら、金はあんの?」
夜吸さんが、スノーボードやウェアを見て回る、女子高生たちに言った。
「わたしはその……お店からいっぱいお金貰ってるんで、頑張って高いの買います」
スノボ侍の漫画を描いてる、市川さんが言った。
「まあ、市川ちゃんは別として、他のヤツはど~なの?」
「わたしは、ブログのアフィリエイト収入がありますから」
山口さんの異世界ファンタジー株式・不動産投資の漫画は、未だに根強いファンがついていた。
「わたしも、企業案件の漫画を受けたときのお金が、まだあったりするんで」
萩原さんが言ったのは、夜吸さんから受けた企業案件の漫画のコトだった。
「いいなあ。わたし、まだ連載始めたばっかだから、お金ないよ」
大野さんが、嘆いた。
「実はさ……大野さんの猫カフェ漫画が、ペットショップから何件かスポンサー依頼が来ててさ」
「ええッ!? そうなんですか!?」
「うん、あの漫画、わたしも人気出ると思ってたのよ。猫好きな妹に、必死に付い会おうとする猫アレルギーのおねえちゃんが健気で」
山口さんも、親友の漫画を褒める。
「大野さんのブログのアフィリエイト、今月かなりバズっててさ。この分だと、余裕でウェアくらい買えちゃうんじゃないかな?」
「う、あわわ。そ、そうなんだ。最近、SNSでも凄い人気だなあって思ってたけど」
「アンタねえ。ブログの方も、ちゃんと見ておかなきゃダメじゃない」
「はあい」山口さんに怒られる、大野さん。
「田中さん、池田さん、池田さんは、だいじょうぶ?」
「わたしたちも、アシスタント料として、月に一万は貰ってるんで」
「お小遣いと合わせれば、なんとかなるかと……」
「それにわたしは佐藤先生に、よくおごってもらってますから」
池田さんが、少し照れながら言った。
「わたしも、萩原先パイが気前いいから、たまにごちそうになってる」
「まあヴァンパイア探偵だと、そんなにスポンサー付かないからさ」
今井さんが先パイを持ち上げると、萩原さんは申し訳なさそうに言った。
「探偵事務所とか、弁護士とか……あるにはあるんだが、どうなんだろうと」
ボクは、自分が原作でもあるので少し戸惑う。
「まあ、どっちも怪しくはあるな。探偵事務所なんて儲かって無さそうだし、弁護士なんて、やたらと自己主張の激しいヤツが多そうだし」
夜吸いさんが持つ、偏見の入り混じったイメージはボクと大差なかった。
「なんとか、収益化の方法を考えないとな」
「あ……あたしはお金無いっス。一番安そうなのにするっス」
芽美は、最初の連載が終了して、金銭的には厳しそうだった。
「芽美のは、オレが出すよ。彼女へのプレゼントだ」
「た……鷹詞ィ!?」
ボクに抱きつく芽美。
周りから、賞賛と冷やかしの声が上がった。
兼ちーが、超絶威力の爆弾を炸裂させて逃げ去ったあと、ボクと佐藤はなんとか芽美たち女子高生をなだめることに成功した。
実際には、完全に成功とは言い難い雰囲気ではあるが……。
「まったく、兼ちーは困ったもんだな……」
「男にも、困ったモンっスけどね」
「そ~そ~。なんで女を見た目で、判断しちゃうかなあ?」
女だって、男を見た目で判断してるだろ……という反論は、禁句だった。
「アハハ……あ、お店が見えてきたよ」
ボクは、見ればわかることを言った。
「お、ここが宇津井さんの会社の経営している、スポーツショップっすね」
「原田、このショップ、そこら中にあるわよ。来たコトくらいあるでしょ?」
「ないっス」
山口さんの指摘も、平然とくぐり抜けて芽美は、店の中へと入っていく。
「おわぁ、こんなショップがあったんスか。スキーやスノボの用品以外にも、サッカーとかテニスとか、色んなスポーツのウェアやシューズが置いてあるっス!」
「タブンここ来たこと無いの、お前くらいだぞ」
「またまたぁ。スポンサー契約もらってるからって、媚売ってっす?」
「原田先パイ、ほんとに来たこと無いんですか?」
「信じられませんね」
「本気で、漫画とかアニメ一筋の人だったんだ……」
田中さん、今井さん、池田さんの後輩三人組もあきれ返る。
「か~、みんな軟弱者っすねえ!?」
「サブカル三昧のお前が言うか……」
おもわず突っ込んでしまった。
「でもさ。みんな、ウィンタースポーツは初心者だからな~。どんなウェアがあるのかな?」
お洒落にも、興味がある萩原さんが言った。
「あ~、かなりカジュアルってか、ストリート寄りなんだ」
「言ってる意味が、ぜんぜんわかんないっス!?」
萩原さんの言葉が、理解できない芽美。
「これなら、冬に普通に着れそうなアイテムですね」
今井さんが言った。
「お、解ってるねえ、今井ちゃん。このウェアなんか、かわいくない?」
「ですね、ですね。あ、先パイ……こっちのも良くないですか?」
「あ~、いいかも!!」
ウェア選びで盛り上がる、萩原さんと今井さん。
「あの二人、仲いいっスねえ。ボードそっちのけでウェアばかり選んでるっス」
「まあそっから入る、女の子も多いからな。ゲレンデ行くと、周りのヤツの格好なんて気にして無いと思うんだが……」
「そんなモンすかねえ、夜吸氏。ところで夜吸氏は、ウェアはあるんっスか?」
「あるよ。流石に結婚式に新婚旅行で金使ったかんな。新しく買うのは、乃梨が許してくれんわ」
「夜吸氏、さっそく乃梨ちゃんの尻に、敷かれてるっスねえ?」
「う、うっせえ!!」
芽美も、夜吸産相手には歩が良かった。
「
「あ、あんまりだぁ~~!!?」
佐藤先生は、兼ちーの刃のように危険な言葉のナイフで、深手を負った。
「な、泣かないで下さいよォ、佐藤先生!」
池田さんが、必死になぐさめる。
「あいッかわらず、イヤミなやつっスね!?」
今度は芽美が、兼ちーの前に立ちはだかった。
「なんだ、ブス?」
森兼 明人は、ファミレスの窓の外を見ながら呟く。
「……だ、誰がブス……で、でもここで答えたらっス!?」
つまり兼ちーは、芽美に背を向けてるのだ。
芽美は、その手には乗るまいと気持ちを落ち着かせる。
「言うよな……ブスに人権なしって……」
兼ちーは、それを口にした。
「……んなッ!?」
森兼 明人の言葉に、その場の誰もが凍り付く。
「はあ? 言わねーっスよ! 黙って聞いてりゃ、人権侵害もはなはだしいっス!!」
「あ~そうかあ?」
背を向けたまま、ガラスに映った芽美と会話する兼ちー。
「だったらお前、ブスも美人も同じ人権が与えられてるって思ってるのか?」
「そ、そりゃそうっスよ……」
「ブスも美人も、世の中で同じように扱われている……と?」
「え? そ、それは……その……っス!?」
「世の中のヤツが並べ立ててんのは、しょせんは建前だぜ。現実には、しっかりと差別されてんだろうがよォ?」
「う……うう……!!?」
「何なら、聞いてみたらどうだ? そのヘンの野郎によォ?」
兼ちーの左手が、ボクそ指さした。
「男ってのはよォ。ブスも美人も、ちゃ~んと平等に扱ってんのかって、周りにいる男共に聞いてみやがれ!!」
(※本当に聞いては、いけません)
ボクは、咄嗟に顔を逸らす。
……逸らした。
逸らしてしまった。
そりゃ、逸らすってもんだろうがよォ!!
「た、鷹詞はどう思ってるんスか?」
「お兄さん、どうなんです?」
「え……二人とも、カワイイよ?」
「それ、ぜんぜん答えになって無いよ!!」
「確かに世の中には、森兼さんの言う差別は平然とあるようね……」
「萩原さん、山口さん、二人とも目がこわい……!!?」
「女の子を見た目で判断するなんて、サイテー」
「ところで……佐藤先生はどうなんです?」
「ひぃぃぃぃぃ!!?」
その日、ボクや佐藤は、集まった女子高生たちに聞かれ続けた。
それはもう、しつこいくらいに何度も何度も。
けっきょく彼女たちは、まったく納得してもくれずに、ボクと佐藤が積み上げて来た信用は、脆くも崩れ去った。
「兼ちー、混乱の間に逃げやがったな……」
「なんでお前、あんなのと契約したんだよ!!?」
「ス……スマン!!?」
ボクは、とんでもない爆弾と契約してしまった事を、後悔した。
「でもっスね。ウチのネット漫画雑誌のメンバー、全員そろってないっスか?」
ファミレスに、一堂に会する漫画家やアシスタントたち。
「フランスにいるイリアを除いけば、全員だね」
萩原さんが言った。
「そっか。最初に声をかけたのが芽美で、そっから萩原さん、山口さん、大野さんが呼ばれて来てくれたんだ」
「そおっスね。んで、あたしが声をかけたのが市川とイリアだったっス」
「わたしとイリアは別の高校なのに、原田に呼んでもらえたから、今こうしていられるんです」
市川さんは、芽美に抱きつく。
「そのあとに、佐藤先生が堂々のデビューをされたんですよね?」
うれしそうな池田さん。
「それで今年に入って、田中さん、今井さん、池田さんが入ってきて、わたしが抜けたのね……」
山口さんが言った。
「あ……一人、忘れてた……」
「鷹詞……思い出さなくて、いいっスよ。むしろ、無かったコトにするっス」
芽美が言ったのは、森兼 明人のコトだった。
「あー、ちなみにだが、居るぜ。オレが呼んどいた」
夜吸さんが、サラリと言った。
「え、居るってどこに……?」
ボクは席を立って、二~三歩歩くと、大型席の反対側のソファに、顔をメニューで隠した兼ちーが座っていた。
「ふ……ふざけんな、ヤッくん!? オ、オレがこんな、リア充どもとどうして同席せにゃならんのだ!!?」
自室とは、まるで別の環境に、パニクる兼ちー。
「おー、あなたが兼ちーさんですか? 初めまして、佐藤です」
女子高生の群れから、逃げるように佐藤が、兼ちーの前の席へと座った。
「アレ? ドリンクバーだけですか?」
敬語を使う佐藤。
兼ちーは、夜吸いさんの友人であり、ボクたちよりもだいぶ年上なのだ。
「だったらどうした? 山盛りポテトフライはさっき、喰っちまっただけだ」
「相変わらず、カロリーガン無視で、コスパだけで選ぶな、お前?」
「うっせーな、ヤッっくんは、人妻の手料理でも食ってろ」
「でもジュースなんて、原価はかなり安いんですよ。コスパがいいかは……」
佐藤が、うんちくを披露する。
「あ? この世の中もモンが、原価しかかかってねーワケねーだろ。バカか、お前」
メニューの向こうから眼を出し、佐藤を睨みつける兼ちー。
「『原価中』っているよなあ? ジュースの原価は安いだの。そいつらの頭ン中じゃ、人件費も、輸送費も、製造コストも、一切かからないんだから、笑っちまうよなあ?」
「ひいいぃい!?」
ボクにしがみ付く佐藤先生。
「そんなコト言やあ、車だって原価しか見なけりゃ、もの凄いぼったくりじゃねえか……鉄やゴムやガラスなんだからよお?」
兼ちーは、相変わらず兼ちーだった。
「今、揃ってないのは、大野くらいっスね。あとからアタシが……あ」
芽美が気を利かせようとしたとき、ファミレスの窓の外を二人の女子高生が通りかかった。
「大野さん、それに山口さんも久しぶり」
二人のうち一人は大野さんで、もう一人は山口さんだった。
あまりの大所帯に、店員が気を利かせて角の大型席に移る。
「ご無沙汰してます、お兄さん。ぐうぜん大野とばったり会って、話しながら歩いてたら、ファミレスの窓で芽美が暴れてるのが目に入って」
山口さんは、ボクのネット漫画雑誌で、ファンタジー世界が舞台の株や不動産取引の漫画を描いていて、一定のファン層を獲得していた。
けれども今年の夏、受験勉強を理由にペンを置いたのだ。
「どう、山口さん。受験勉強は順調?」
「ええ、まあそれなりに。あ、あとコレ、漫画のデータなんですが……」
「え? 山口は、漫画辞めたんじゃ無かったっすか?」
「そうなんだケド、受験勉強の合間に描けたから、持ってきたのよ」
「成績もバッチシなのに、余裕っすねえ?」
「いや、芽美……お前の方はどうなんだ?」
「え、アタシはっスねえ? 相変わらず、低空飛行を続けてるっス」
「お前も来年は受験生なんだから……」
「いや、前にも言ったっスけど、あたしの目標は漫画家一本っス!」
「勉強がしたくないだけだろ?」
「んー、前はそうだったんスけどね。漫画家と言えど、勉強は必要かと思って最近は、授業は真面目に聞いてるっスよ」
「前は?」「ノートや教科書に落書き……漫画の練習っス!」
まあボクも、人のコトは言える状況でも無かった。
「有難う、山口さん。前に貰った三話分も、今月で終わりだから寂しいと思ってたんだよ。ファンも、嘆いてたしな」
「わたしの漫画、絵よりも文字が多いから、またお兄さんには手数をかけるわ」
「いいよ、そんなコト。オレの仕事なんだからさ」
「ええ、有難う」
山口さんは、頬をうっすらと紅く染めた。
「でも、来月まで延命されたとはいえ、これで最終回なんスね」
芽美は、漫画データが入っているであろう、SDカードを眺めしんみりしていた。
「え? 三話分よ、それ」
「へ?」「さ、三話分!?」
その場にいたみんなが、閉口した。
「超人っっスね!!」
「どうしてそんなコトが、出来ちゃうかな?」
「勉強の合間の時間を利用して、息抜きに描いただけよ。それより、この集まりは何?」
「それはっスね。みんなでスノボ合宿をしようという話になったっス!」
「山口さんも、良ければ来ない?」「ええ……そうね」
ボクの誘いに、山口さんは顔を縦に振った。